Morlin Heights (モーリン・ハイツ)
※カッコ内は邦題(一部例外を除く)
アルバムについて
1976年発売、プロデューサーはロイ・トーマス・ベイカー。よって「クイーンっぽい」と言われることもあるようだ。
「前二作とうって変わってハードなサウンド」と必ず言われるアルバムである。
確かに最もパイロットらしくないアルバムだと思う。ちなみに内袋には「NO HAND CLAPS」とあるという。
そうなったのはやはりプロデュースの違いが最も大きいのだろうが、私はイアンの楽曲によるものも大きいと思う。
なんというかイアンの曲って、超かっちょいい感じが多めじゃないですか。
パイロットっていうバンドは音楽的に「かっこいい!」とはちょっとだけ違うところにあったと思うんです。私はさんざん「かわいい」とか書きましたが。
だからってイアンの曲を批判するつもりはさらさら無いですよ。個人的には「The Mover」をアラン・パーソンズのプロデュースで聴いてみたいとか思います。フォローになってるのかなこの文は…
パイロットのアルバムとして聴くと「こんな引き出しも持ってるのか~」と思うけど、
経歴抜きにいちロックのアルバムとして聴くなら良い感じにカッコイイアルバムだと思う。
まあでも、パイロットがやる必要性はあまり無い音楽かも。
全体にアレンジ・プロデュースが今どきな感じなのかもしれない。
2011年に1976年の音楽を今どきと言うのも変だが。
今どきというか、ビートルズっぽい感じが薄れたっていうことか。
そしてこのアルバムを語るに外せないのが、ビリー・ライオールの不在である。
ライブが嫌だった、自分の曲がシングルに選ばれないのが嫌だった、などなど、
どこを取っても後ろ向きな理由ばかりで寂しい。
その後ビリーはソロになったり裏方になったりしますがその話はまたの機会に。
とにかく、このアルバムにはビリーがいない。
あのシンセ、フルート、あのひねたメロディーももうない。
(とか言うとデヴィッドの曲にストレンジさが無いようだが実際はそんなことないだろう。)
そうしてまた、ファンにとってこのアルバムが寂しいものになってしまうのである。
さらにアルバム発売直前には結婚のためにスチュワートまでもが脱退してしまうのであった。
調べれば調べるほど寂しいよこのアルバムは…
でも、セールス的に一番ふるったのはこのアルバムだという。
ということは「パイロットは3rd以外は軟弱でダメだ」とか言う人もいるんでしょうか?(妄想)
パイロットは別に軟弱じゃないと思うけどなあ。(妄想)
私は初めて聴いた時はただただ「かっこいい!」と思いました。
だからもちろん大好きなアルバムなんだけども、
うーん…いろいろ調べて書くとどうにも否定的なことも書いちゃったなあ。
収録曲
・Hold On
おそらく全パイロットファンが驚愕した一発目。
前二作の「こぼれる微笑み」「You're My No.1」ときて「Hold On」だもんなあ。
何が違うって、やっぱり「かわいらしさ」が消えたことでしょうか。
今まで以上に声を張るボーカル、キツめなシンセの音、何よりやっぱり曲調、など。
ところでアルバム通してそうなので始めに言っておこう、ギターがかっこよすぎる。
・Canada (新しきカナダ)
1976年9月にシングルカット、B面は「The Mover」
コーラス部分が貧相なクイーンとか言っちゃダメよ。
「従来のパイロットっぽい」と言われることも多い一曲。
この良いメロディーやおどるベース、あとピアノがリズムを刻んでるあたりがそういう感じ?
でも、このシンバルがロールしてるのがどうにも違和感がある。聴き慣れない。
・First After Me
これは従来のパイロット臭が少ないような気がする。臭とか言うとなんかやだな。
このエコー処理とかによる壮大な感じがそうさせるのかな。
パイロットって壮大な感じは無かったんだなあ。
だからって嫌いなわけはなく、気づけば「Oh No,Boy」などと口ずさんでる私がいます。
・Steps (人生の足跡)
イアンの良い曲。アコギが美しい。
このシンセの音好きだなあ。
ところでこの曲に限らないかもしれないけれど、
コーラス重視になってるせいか、ボーカルそのものが弱い気がする。
電車の中などで聴くには不向きな。シャカシャカに聞こえちゃって。
・The Mover
1975年11月、シングル「Lady Luck」のB面。
1976年に「Canada」のB面にも。あくまでB面か…
楽しくてかわいい。踊りたい系。
「But still I~」からの変わりようも好き。
シンセなのかギターなのか、びょびょびょって鳴ってる音が気になる。
この曲以外にもちょくちょく出てきますよね。ゆえになんだかアルバムのカラーみたい。
・Penny In My Pocket
1976年9月にシングルカット、B面は「Steps」
こんなこと言うのもアレだが、普通にめちゃくちゃカッコイイ。普通って何だ?
この曲も従来のパイロットらしいメロディーと言われるようだ。
しかし、ギターソロが悶絶級のかっこよさ。多分パイロットで一番長いと思う。
これまでの「ソロ始まったところなのにもうフェードかよ!」ってのが無いのがいい。
ところで3:38あたりのノイズが気になる。コーラスぶった切ってるように聞こえるんだけども。
・Lies And Lies (嘘の嘘)
レコードではここからB面。
イントロがやっぱりなんとなく壮大な雰囲気だなあ。
この曲はなかなかにかわいい感じとカッコイイ感じが合わさってると思う。
ベースがポール・マッカートニー風でかっちょいい!
ギターソロは一撃離脱系だけど、サビ直前の「ちゃらららららららららら」ってやつが好き。
・Running Water
シングルが1976年5月に発売、B面は「First After Me」
もう一度言うけど、シンバルのロールが聴き慣れなくて変な感じ。
あとピアノのグリスサンドも聴き慣れなくて変な感じ。
そしてこのさらりとコブシをきかせたボーカルを良しとするか否か?
私は後追いのせいかパイロットなら何でもメロメロなんですけど。
おおう、ギターが泣いている…
・Trembling (震え)
アコギでかっちょよく始まるけれど、騙されてはいけない!(言い過ぎ?)
途中から何聴いてたのか忘れちゃうレベルなんだよなあこの曲…
私なんかはこういうずどーんとしたアレンジを聴いてると笑っちゃうんですけど、
リアルタイムで聴いてたファンは一体どう感じたんだろうか…
でもボーカルは変わらず爽やかでステキ。
・Maniac(Come Back) (マニアック)
タイトルの(Come Back)の文字を見、ビリー版と聞き比べると泣けてくる。
パイロット版の方がバンドサウンドで縦ノリが強め。そしてギターがすごい。だいぶざっくりした表現ですが。
英オリジナルの歌詞カードには、歌には入っていない「Come Back」の文字があるらしい。やめてよ悲しいよ。
聴いてないってことは無いだろうけど、ビリーはこの曲聴いてどう思ったんだろうな。
なんて考え出したら夜も眠れません。
パイロットの楽曲の中でデヴィッドとビリーが純粋に共作した曲っていうのは本当は無いそうだから、
つまりこれが唯一の共作曲…せつないなあ。
・Too Many Hopes (夢追い人)
アルバム全体的に、ピアノが違うからパイロットっぽくないってのも多分あるだろうな。
ところで歌詞世界が従来のものとだいぶ変わっていることがよく分かる。
この曲もメロディーがものすごく良くて、縦ノリのワクワク感があるのに、
そのメロディーでそんな悲しいこと歌われたらもう泣くしかないよ。