The CraigHall Demos 71:76
アルバムについて
2007年発売のデモ音源集。1971年にデヴィッドとビリーのふたりで録ったデモから、1976年にデヴィッドひとりで録ったデモまで。
ライナーにはデヴィッド自身による各曲へのコメントが。
さらに日本盤はボーナストラック1曲と戸村さんによる愛あふれる解説付きという嬉しい仕様。
あんな曲やこんな曲のさなぎとして聴くも良し、パイロットの新作気分で聴くも良し。デモというのにどの曲もしっかりしてます。
終始一貫して流れている「DavidとBilly」の雰囲気には時に嬉しく、時に淋しくさせられます。
どうでもいいけど、1971年のビリーは18歳か…私も時間が無いな…
収録曲
・The Library Door
正規版は「Two's A Crowd」と「Blue Yonder」に収録。ボーカルはデヴィッド。
キーの高さや出だしの消え入るようなシンセなど、「Blue Yonder」のバージョンに近い感じ。
つまりもともとがこういうイメージだったんですね。
でも声の若さのせいか、ボーカルが他2バージョンよりもずっと淋しげ。
時折入るハモりがまた切ない。
・Lazy Davy
未発表曲。ボーカルはビリー。
相方への愛あふれる一曲。
上品に暴れるピアノやフルートや(やりすぎの兆しが既にうかがえる)メロトロンのストリングスなど、ビリー全開です。にやにやしてしまいます。
サビの「Lazy」で声がひょいっと裏返る感じもいかにもビリー。
ついでに「へへいへーいっ」のコーラスがかわいい。
・Joe
未発表曲。ボーカルはデヴィッド。
くだんのLazyなDavyによるけだるい雰囲気の曲。(歌詞はそういうわけでもなさそうだけど)
絶えずぱらぱらと降るようなピアノやギター(ワウペダル?エフェクトについて何も知識が無いので間違ってたらごめんなさい)、
そして「ばっばっ、ばーらーう」のコーラスがけだるい良い感じを増幅させます。
さりげなくベースがぐりぐりと動いているのもカッコいい。
・Love Has Got Me By The Throat
未発表曲。ボーカルはビリー。
2曲目のような曲調と並んで、こういう50'sポップス風な曲調もすごくビリーらしい曲のはずなんだけど、
パイロットのアルバムにはあんまり収録されてないのが残念です。すごくいいのに。でもこうして日の目を見たのだからありがたい。
「would you like to~」がかぶさってくるところとか、ロマンチックでたまりません。
ところで曲調もテンポも違うけど、アウトロが少し「Do me Good」っぽい気がする。全ての楽器がぐいぐい動いて。
・Meet Me Now
未発表曲。ボーカルはデヴィッド。
出だしが少ーしだけプロコルハルムっぽい雰囲気の気がする。というよりクラシカルってことか。
デヴィッドの声の伸びが良い感じです。
サビ前に天に昇っていくギターが、なんだかすごくパイロットらしい。
・Now that I've Found You
正規版はMarilyn Millerのシングル「You've Got To Get Me Higher」のB面。(どんな形でもいいから再発して!)
ボーカルはデヴィッド。
ビリーの50's風その2。この曲大好き。
日常の中で何の脈絡もなく頭の中に流れてきて大声で歌いたくなることがすごく多いです。
下の方で動くシンセに踊らされます。ハンドクラップも冴え渡ります。
・My Lonely Companion
未発表曲。ボーカルはデヴィッド。
曲のしっとり感に対してボーカルが元気すぎる感がしないでもないけど、かわいいからいいや。
にしてもデヴィッドは声高いなー。
「Meet Me Now」に引き続いてこれも後半のギターの三連符がいかにもパイロットらしくて嬉しくなります。
・Reason
正規版はWilliam Lyall「Solo Casting」に「Reasons」として収録。
こちらのボーカルはデヴィッド。
ビリーのバージョンと大きな違いは無いような。デヴィッドのボーカルでも違和感が無い!
そしてやはりこの時点でうかがえる大仰ストリングスの兆し。和む。
ただこちらではこの暴れるピアノをビリーが弾いているっていうのが嬉しい。ソロの方では違う人みたいだったから。
とどめにフルートまで!ありがとうございます!
・Sky Blue
日本盤のみのボーナストラック。
正規版は「From The Album Of The Same Name」に収録。ボーカルはデヴィッド。
これはストリングスが入っていないのでだいぶ簡素な印象だけど、でも完成型が見える。
これもハンドクラップがいいですね。
…デヴィッド声高いなー!あ、裏返った。
・Cold Stories
未発表曲。ボーカルはデヴィッド。
安定感のあるほのぼのとかわいい曲。
スチュアートのコーラスが堪能できます。パイロットでスチュアートの歌声が聴けるのはこれと「Hold Me」くらい?
相変わらずビリーのアープの音はかわいい。みゅうみゅう言う。
・You're My Number One
正規版は「Second Flight」に「You're My No.1」として収録。ボーカルはデヴィッド。
曲の構成が少しだけ違ったんですね。
何度もやってくるイントロのパターンがたのしい。
最初の方のシンセがあまり目立たないせいとストリングスが入っていないせいか、ギターの歯切れの良さが際だつ感じです。
・Passion Piece
正規版は「Second Flight」に収録。ボーカルはビリー。
正規版と大きな違いが無いだけに間違い探しっぽく楽しめます。
管楽器が無いのはともかく、「She gets the best of me」が無かったとは。
それから後半部のドラムがカッコいいです。
・January
正規版は「Second Flight」に収録。ボーカルはデヴィッド。
この曲は「デモ段階ではこんな感じだったんだー」と思うのがとりわけ楽しいです。
ギターが無い!イアンがいないから当たり前だけど!
でもその代わりにメロトロンがかわいい雰囲気を出してます。
あと、正規版のあの跳ねるベースラインの成り立ちもうかがえます。個人的にはそれが嬉しい。
・Your Devotion
正規版は「Second Flight」に「You're Devotion」として…でも裏ジャケとブックレットで表記が違うな。iTunesには「Your Devotion」で出ます。
ボーカルはビリー。ああーこの曲も大好き。
50's風その3。ビリーが歌うと途端にすごくビリーの曲らしくなりますね。
これも前曲と同じく、ギターが無い代わりに鍵盤が目立ちます。いい音です。
・Heard It All Before
正規版は「Second Flight」に収録。ボーカルはデヴィッド。
ドラムの音が軽くてかっこいい。ドラムのことはよく分からないもので、耳に残るといつも「かっこいい」ばかりで芸が無くてすみません。
歌声という歌声が全部すごく楽しそう。だ・だ・だ・だーらだっだー♪
というか正規版よりキーが高い!若いな!
・Lady Luck
正規版はアルバム未収録シングル「Lady Luck」。(「A's B's & Rarities」で聴けます)
だいぶさっぱりしてますが、こっちの方がパイロットの雰囲気には合ってるような。
間奏のベースがかっこよく、そしてシンセはいい音です。
これを聴いた直後に正規版を聴いてみるとひっくり返る気持ちになりますね。
・Scorpio
未発表曲。ボーカルはデヴィッド。
イギリスらしくこじんまりとかわいい曲。ピアノが目立つので、未参加のビリーのおもかげが見えます。
ボーカルが優しげでかわいい。
アウトロのドラムの「ばしゃっ!」がかっこいい。
・Get Up And Go
正規版は「Two's A Crowd」および「Blue Yonder」に収録。ボーカルはデヴィッド。
未発表曲かと思いました…
前に進んでいく感じの正規版に比べてよこに揺れる感じ。
ボーカルもどれよりも優しく切ない感じです。
このシンセの音はいわゆる「ビリーっぽい音」よりもなんとなく丸っこい。
・Goldmine
正規版はBeagle Hatの「Magical Hat」に収録。と言っていいのでしょうか。ボーカルはデヴィッド。
淋しい曲なのにどこまでもポップで、その点少し「Too Many Hopes」を思わせます。
ただこちらは悲痛さよりもあきらめが覆っている感じで、切なさがつのります。
…まとめ的にパイロットへの思いを言いたいけどうまく言えません。
私がパイロットを知ったのは解散してから30年以上も経った後だけど、その時は「古いから良い」や「古いのにノリが古くない」みたいなそういった一歩引いたような視点は一切近寄ってこないで、ただただ「好き!これ好き!」と思っていました。
今だってそうです。時代がいつなのかは関係なくパイロットが大好きです。
・Lost Within Your Dreams (Hidden Track)
アビイ・ロード式にびっくりした。
正規版は「Sooner Or Later」として「From The Album Of The Same Name」に収録。ボーカルはデヴィッド。
すごく短いんだけどデモとは思えぬほどの完成度です。かっこいい!!
これもまたイアンがいない分シンセが目立つ感じになっています。が、正規版よりバンドらしさが強いような気も。ピアノの音が弱いのかな。